理系必見!!合気道と物理学 -モーメントとバランスを崩す条件-
こんにちは!
今回は「物理と合気道」の組み合わせでお話したいと思います!
あんまり合気道というのを理系的な視点で語られることはないんですよね...物理学を専攻された方が物理学と合気道の関連性について述べていますが,それ以外で物理学に着目した記事等は見受けられません.
でも合気道も物理法則に基づいており,高校内容でも説明できるような物体運動があります!ということは合気道を理系的な観点で分析できるチャンスなわけですね笑.
ということで今回は理系的な視点で合気道を分析していきます!
※この記事は物理の内容を含んでおり,高校物理の知識が少し必要です!!理系の皆さんはどうぞお楽しみを,文系の皆さんはなんとなくエッセンスを感じてもらえると幸いです!笑
さて,高校物理を習った皆さんは「力のモーメント」という言葉に記憶はあるでしょうか?
力のモーメントとは物体に回転を生じさせるような力の性質を表す量のことを意味します.
力のモーメントは,作用点からの距離rとその点で働く力Fの積によって表されます.
※大学物理においてはベクトル積を用いて表されますが,今回はなるべく単純に説明するために大学物理は介入させないで説明していきます.
さて,ここで剛体の転倒条件について考えていきます.剛体というのは変形することのない大きさのある物体のことです.高校物理の力学においては,物体は質点という大きさのない形で解釈されることが多いですが,剛体では大きさが考慮されます.
今回は剛体を直方体であるとして,斜面上に剛体を設置します.この時,剛体の重心は中心部分にあるとします.
さて,ここでどのような力が作用するのか,剛体に働いている力を図示します.
このように,剛体には重力・垂直抗力・摩擦力(静止摩擦力)の3つの力が働いています.
ではこの斜面の角度を大きくするとどうなるでしょうか??
さて傾きを大きくしてみました.すると重力は鉛直下向きに働くこと自体は変化しないのですが,直方体の対角線を中心に考えてみると重力の位置が変わっていることがわかります.傾きが大きくなると重力の向きと対角線の関係に変化が生じるわけですね!
ではさらに傾きを大きくしてみましょう!
かなり傾きを大きくしてみました.剛体が転倒する直前の状態です.この状態では重力のベクトルが直方体の対角線と同じ方向になります.
私の師範の師匠にあたる高岡貞雄先生は開祖:植芝盛平翁先生の口伝として「合気道とは人がつまずいて倒れるのと同じである」と申されました.つまずくというのはまさに今回お話した転倒の内容と同じです.
では今回の内容を合気道に当てはめてみましょう.今回は人を星型であるとして単純にして考えてみます.
さてこれが人に働く力となります.お気づきになった方もいるかもしれませんが,人の重心というのは完全に中心にあるわけではなく,ヘソの下にある丹田(たんでん)に重心があります.したがって重心は中心の少し下に位置しています.つまり人は平地に立っている時は重心が下にあることから安定していることがわかります.
では少し傾いた斜面に人を立たせてみましょう!
直方体と同じように,重力が対角線に近い状態になりました.
ではさらに傾けてみましょう!
これが人が転倒する直前の状態になります.大体30度くらいになりました.
ここまでで以下のようなことが考察できます.
1.人間は重心が下にある分,平地においてはかなり安定した状態で立つことができる
2.しかし重心が下にある分,斜面上では重力が対角線に重なる角度が直方体と比較して小さい.したがってバランスを崩すのは人間の方が早い
そして,合気道というのは平地において擬似的に斜面を作り出し相手のバランスを崩すことなのではないかと私は考えています.
イメージとしては以下のような感じです.
ここで注目してもらいたいのは,今までは登場しなかった力『相手の手を引く力』です.合気道では基本的に手を通じて相手を引っ張りますので,その分相手に力が働きます.
今まであえて話してきませんでしたが,地面には摩擦力(静止摩擦力)というものが働いています.この力がなければ剛体は転倒することなく滑り出してしまいます.
つまり,相手を倒すためには今立っている地点に相手を縫いとめておく必要があるということです.これは畳の摩擦力もそうですし,相手が避けにくいような動きをするというのもこの条件に当てはまるでしょう!
さていかがだったでしょうか?今回は「力のモーメント」という力学の考え方を用いて相手が倒れる状況について考察をしてみました.
実際には人というのは星型のように単純な形をしていないので倒れる条件というのは様々あるかと思いますが,今回は単純化して考えてみました.
理系的に合気道を眺めるというのはあまり例がないので,これはチャンス!!ということで今後も理系的に合気道を考察する記事を作っていきたいと思います.